本研究では、シリコン表面に、末端に機能部位を有する長鎖有機化合物を配列・固定し、安定で高機能・高配向な半導体/有機単分子膜デバイスを構築することを目的として、まずシリコン、有機単分子膜の特性評価を行った。 第一に、シリコン表面の活性なOH基を、HF・エタノール10%溶液中で化学エッチングすることでH基に置換した。この終端水素は非常に安定で、1週間空気中室温で保存してもFT-IRでSi-Hの吸収ピークを観測することができた。ついで水素終端ポーラスシリコン(PS)を作製し、その電気化学発光(EL)機構について考察した。n型のSPの場合、溶液中に正孔注入種を入れて陰分極すると注入された正孔と多数キャリアである電子とが再結合して可視光を発する。ところがp型の場合、溶液中に何も入れなくても陽極酸化するだけで発光する。このp型PSのEL機構を調べるために、半導体用反射FT-IRその場測定システムを構築・測定し、p型PSはEL中にその終端水素が酸化されていくことがわかった。この酸化される量と発光量との定量的な考察から、p型ポーラスシリコンの電解酸化中のEL過程は、多数キャリアである正孔と終端水素が酸化される際に注入される電子との放射性再結合であるということがわかった。 第二に、修飾する機能部位として電気化学的に可逆で安定なフェロセンを選択し、その機能および吸着過程を金を基板として調べた。フェロセンに炭素数4の末端にチオール基およびジスルフィド基を有するアルキル鎖およびアシル鎖を導入した分子を合成して、修飾電極を作製した。どの修飾電極においても可逆な酸化還元反応を観測できたが、その吸着過程および酸化還元電位は分子に導入したアルキル鎖およびアシル鎖の数に依存した。つまり修飾する分子の設計により吸着速度、吸着量、および修飾電極の酸化還元電位を制御可能なことがわかった。 現在、修飾シリコン電極の評価を行っている。
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