本研究では、光還元により得られた銀コロイドにおいて光凝集の起こる条件を明かにし、光凝集を支配している因子の解明を目的としている。溶液の温度が50℃の時には、光凝集の進行が速いものの、光を照射しなくても凝集が進行したため、本研究では溶液の温度を恒温槽により30℃にコントロールして実験を行った。アルギン酸ナトリウム(SA)、ペクチン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリメタクリル酸を保護剤に用いた場合、SAを保護剤に用いた場合だけ光凝集が起きた。SA以外の保護剤では保護作用が強すぎたためと考えられた。また、SA濃度が高い場合にも保護作用が強すぎて光凝集は起こらず、0.2wt%が適当であった。波長350nm以下の紫外光を凝集の程度の低い銀コロイド溶液に照射すると、凝集が更に進行した。これは、この紫外光により保護剤の光分解がおき保護能が低下した事と、銀イオンの光還元が更に進み微粒子濃度が上昇した事が原因である。波長350nm以上の近紫外、可視光を用いた場合、保護剤の光分解・銀イオンの光還元は起こらない。この波長領域では微粒子濃度が高い時、全ての波長の光によって凝集が促進された。しかし、微粒子濃度が低い時には、波長365nmの近紫外光によってのみ凝集が促進され、より長波長の可視光では、逆に、凝集微粒子の分散が観察された。光吸収によって凝集粒子中に不均一に熱が生じ凝集微粒子の分散が起こったものと考えられた。更に光強度が弱い場合には、どの波長でも凝集微粒子の分散が観察された。これらの観察より、光凝集効果の照射光強度依存性・微粒子濃度依存性は、光吸収による凝集微粒子分散効果におけるそれらの依存性より顕著であることが示唆された。以上のように光凝集を支配する因子は、保護剤の保護能力、照射光の波長・強度、微粒子の濃度である事が明らかになった。
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