従来、酸素イオン伝導体としては主に4価の金属酸化物が検討されてきたが、本研究ではAlまたはGaをBサイトに用いたペロブスカイトが高い酸素イオン伝導性を有する点に着目し、主にBサイトにGaを用いたペロブスカイト酸化物について酸素イオン伝導性を検討し、極めて高い酸素イオン伝導性を有する酸化物を開発することを目的とする。従来の研究において、LaGaO_3系ペロブスカイトが極めて高い酸素イオン伝導性を有することを見い出したので、本研究ではLa_<0.8>Sr_<0.2>Ga_<0.8>Mg_<0.2>O_3を中心に、A又はBサイトの複合化及び、A又はBサイトの欠損を行い、その影響を検討した。まずLaサイトへ9:1の組成で種々の希土類元素を添加したところ、添加する希土類元素により、イオン伝導度及びイオン輸率が変化し、Ndを添加した系では電気伝導度はほとんど低下することなく、イオン輸率が大きく向上することがわかった。一方、BサイトへAl又はInを添加し、その複合化を行ったところ、Bサイトへ、Al又はInを添加するとイオン伝導度は低下するので、Bサイトの複合化は望ましくないことがわかった。次にA又はBサイトカチオンの欠損効果を検討したところ、Aサイトカチオンを欠損すると電気伝導、イオン輸率ともに低下するが、Bサイトカチオンを欠損すると電気伝導はわずかに向上し、イオン輸率も向上することがわかった。この結果、La_<0.8>Sr_<0.2>(Ga_<0.8>Mg_<0.2>)_<0.95>O_<3.8>の組成の試料は、ほぼ1のイオン輸率を示すとともに950℃でlogσ=-0.4程度という従来の材料に比べても十分高い酸素イオン伝導性を有する材料であることがわかった。 本研究ではさらに高い酸素イオン伝導性を有する材料の開発を目的に、Ba_3Ga_2O_6系の材料の電気伝導についても検討を行った。Ba_3Ga_2O_6は結晶構造が十分明らかにされていないが、立方晶系に属し、高い酸素イオン伝導性が期待された。電気伝導及び、ガス濃淡電池による測定からBa_3Ga_2O_6はほぼ完全な酸素イオン伝導体であることが確認されたが、電気伝導度は950℃でlogσ=-3.0程度と低く、今後添加物等を用いることで、さらに高い酸素イオン伝導性を有する材料が見い出される可能性が示唆された。
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