層状ニオブ・チタン酸塩にトリスビピリジルルテニウム錯体(Ru(bpy)_3^<2+>)が包接された以下の系を検討した。 Ru(bpy)_3^<2+>-K_4Nb_6O_<17>層間化合物 層状ニオブ酸塩K_4Nb_6O_<17>に種々の反応条件下でRu(bpy)_3^<2+>のインターカレーションを行わせ、構造の異なるいくつかの層間化合物、すなわち、層間にRu(bpy)_3^<2+>のみがインターカレートした試料とぬけを合成した。層間に挿入されたRu(bpy)_3^<2+>の発光挙動を検討したところ、いずれの層間化合物についても、層間にRu(bpy)_3^<2+>が高濃度で存在することに起因する濃度消光が観測された。しかし、層間にアルキルアンモニウムイオンが共存する試料では、光不活性なアルキルアンモニウムイオンがRu(bpy)_3^<2+>イオン間の電荷移動を阻害するため、濃度消光はある程度抑えられることがわかった。 Ru(bpy)_3^<2+>-HTiNbO_5、H_2Ti_4O_9層間化合物 HTiNbO_5、H_2Ti_4O_9に予めアルキルアンモニウムイオンをインターカレートさせ、これとRu(bpy)_3^<2+>とのゲスト交換によって層間化合物を合成した。中間体ゲスト種であるアルキルアンモニウムイオンのアルキル鎖長を変化させることによって、基本面間隔や共存アルキルアンモニウム量の異なるいくつかの層間化合物が得られた。層間Ru(bpy)_3^<2+>の発光挙動は試料の基本面間隔に依存し、特に基本面間隔が小さい、すなわち層間が狭い試料ではRu(bpy)_3^<2+>はホスト層の影響を強く受け、錯体が歪んで存在することによる特異な発光スペクトルを示し、発光寿命はホスト層との相互作用によって短くなることがわかった。 以上より、層間構造に基づいたRu(bpy)_3^<2+>の光物性の制御が可能であり、ある条件下では層間Ru(bpy)_3^<2+>とホスト層との光物理的相互作用が起こる、すなわちホスト層が光増感される可能性があることを明らかにした。
|