本年度はゾル-ゲル法を用いてNASICON型リン酸金属塩MZr_2(PO_4)_3[M:LiまたはNa]の膜合成を試み、以下の事項を明らかにした。 (1)リン酸金属塩のゾル-ゲル法による合成 1)各種のアルコキシド(ジルコニウムエトキシド及びリチウム(ナトリウム)エトキシド)及び五酸化リンをアルコール中で還流させて、続いて水を加えることにより透明なゲルを得ることに成功した。また透明ゲルを得るための最適条件を明らかにした。 2)ゲルを焼成すると、Li体では500℃、Na体では400℃で目的とするリン酸金属塩の結晶相がXRD上に認められた。これらの温度を蒸発乾固法と比較すると、Li体で100℃高いがNa体で100℃低い。また一般に知られているLi体のβ-硫酸鉄型構造からNASICON型への結晶転移は、蒸発乾固法よりも約300℃低い600〜700℃の間で認められた。これよりゾル-ゲル法ではより低温でNASICON型が得られることがわかった。 3)還流時の溶媒にはエタノールよりもイソプロパノールを用いた方が、より低い焼成温度で目的物が得られた。 (2)リン酸ジルコニウムの薄膜化 ゾル-ゲル法で調製したLiZr_2(PO_4)_3の粉末をグリセリンに分散してアルミナ板上にディップコーティングしたものを焼成すると、600℃以上でLiZr_2(PO_4)_3が結晶性よく生成した。 (3)リン酸ジルコニウムのイオン交換 (2)で合成した薄膜状LiZr_2(PO_4)_3でLiイオンの回収実験を行った。これまでの粉体の場合とほぼ同じ回収率が得られたが、600℃、800℃で焼成した膜ではイオン交換後わずかに膜の剥離が観察された。今後は中間層を置くことを検討していきたい。 以上のように、本年度はゾル-ゲル法によるリン酸金属塩透明ゲルの合成条件を確立した。製膜条件の確立と光機能性の検討は今後の課題である。
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