研究概要 |
本研究ではTiO_2を中心として,これにY_2O_3,ZrO_2,Ta_2O_5を加えた系について融液超急冷を行ない,組成や急冷条件による構成相の変化を調べた.そして通常の方法では得られない新物質が得られた場合には,それらの熱安定性や電子状態の評価を行った. ZrO_2との2成分系では,H_2を含む還元雰囲気で合成した試料がTiO_220〜70mol%の広い範囲で立方晶蛍石構造の固溶体となった.この相の生成はTiイオンが+4から+3へ部分的に還元されたためであることを,XPSおよびTGによって確認した.また,これらの急冷体をO_2中で酸化処理した後可視-紫外域の拡散反射スペクトル測定を行った結果,吸収端波長はTiO_2量によってほどんど変化せずいずれも380nm付近で,TiO_2と比較して少し短波長側へ移動していた.Ta_2O_5との2成分系では,ルチル構造TiO_2へのTa_2O_5の固溶限界が還元雰囲気中の急冷体で大幅に広がり,ほぼ30mol%まで均一な固溶体が生成した(状態図では10mol%程度).この結果は,Tiイオンの還元によって陽イオンの平均原子価が+4に近い状態が保たれたために起こったことがXPSとTG測定から明らかになった.また,O_2中急冷体では,TiO_260mol%付近の組成でこれまで報告のない新しい化合物の単相が得られた他,高温型Ta_2O_5へのTiO_2の固溶体がTiO_240mol%程度までの組成で生成した(状態図では20mol%以下).これら3種類の新物質についても拡散反射スペクトル測定を行なったが,吸収端波長は各端成分の値の間で組成とともにほぼ連続的に変化し,結晶構造の違いによる特異な挙動は認められなかった. 以上のように,本研究の結果からいくつかの酸化物半導体の過飽和固溶体における電子状態の変化の様子が明らかとなった.このような変化と触媒活性との関連については,現在研究を進めている段階である.
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