チタンのアルコキシドを種々のアルコールやトルエンなどの無極性の有機溶媒に溶解し、これをオートクレーブ中、高温高圧下、気相からの有機溶媒に溶け込む少量の水を用いて加水分解するとともに結晶化させる手法を検討した。この手法によりアナタ-ス型酸化チタンが生成することを見いだし、また、これが結晶子径約9mmの超微結晶の集合体からなっていることをX線回析、透過型電子顕微鏡(TEM)観察から明らかにした。酸化チタンの有機溶媒に対する溶解度がかなり小さく、結晶成長が抑制されるためこのような酸化チタンの微結晶が生成したと考えられる。水を溶媒に用いる水熱法では微結晶合成は困難である。本手法で得られた酸化チタンの大きな特徴として、高温で焼成しても結晶成長が小さいことが挙げられる。通常のアルコキシド法で得られる無定形水和酸化チタンを400〜500℃で焼成するとアナタ-スが結晶化し、その結晶径も大きくなるのに対し、本手法で得られた酸化チタンは500℃で焼成しても11〜15nmの結晶子径を保ち、また、これに対応して、100m^2g^<-1>以上の表面積を維持した。細孔経分布も結晶の間隙に由来すると考えられるシャープな分布のピークが10nm付近にみられた。以上のことにより本手法で得られた酸化チタンは常法では合成困難な種々の優れた物性を示すことが明らかとなり、現在、J.Mater.Sci.Lett.に投稿中である。さらに、この酸化チタンを触媒担体および光触媒材料として利用することを現在検討している。
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