研究概要 |
1,2.S-B化合物のアセチレン類への付加が、触媒量のPd(PPh_3)_4の存在下、位置および立体選択的に進行し、対応する9-[(Z)-2-(オルガノチオ)-1-アルケニル]-9-BBNを収率良く与えることを見いだした。チオボレーション試薬としては、9-BBN誘導体が適当であり、9-BBNとチオールとの脱水素縮合により容易に得られる。しかしその際、立体障害の大きなチオールは利用が難しかったが、白金等の遷移金属触媒を用いることにより、効率良く9-(オルガノチオ)-9-BBNが得られることも明らかにした。 3.チオボレーション試薬としてはアリール、ベンジル、アルキルチオ誘導体が、アセチレン類としては末端型がそれぞれ利用可能であり、組み合わせにより様々なβ-チオビニルボランが得られる。また、官能基選択性にも優れており、アセチレンに種々の官能基を有する場合でも、反応は炭素-炭素三重結合で選択的に進行する。 4.チオボレーションの位置および立体化学、またゼロ価パラジウムのみが活性を示すことから、本反応の機構は、S-B結合の低原子価錯体への酸化付加によるチオボラートの活性化、アセチレンの挿入、β-チオビニルボランの還元脱離を含むと考えられる。鍵反応である酸化付加については、^<11>Bおよび^<31>P NMRにより詳細な検討を行ったが、S-Pd-B錯体の存在は確認できなかった。恐らく、酸化付加体は熱力学的に不安定で、系中では極く低濃度しか存在しないためであろう。 5.β-チオビニルボランは、チオ基の強い電子供与性のため、ビニルボランとしては例外的に高い求核性を示し、メタノールにより容易にプロトン化される。その他の有機求電子剤も利用でき、アルデヒドやイソシアナ-トへの1,2-付加、有機ハロゲン化物とのクロスカップリングにより、対応する1,2-二置換型ビニルスルフィドが、位置および立体選択的に収率良く得られる。
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