研究概要 |
液晶性有機分子の新規合成法の開発を目的として,ビフェニル類の水素吸蔵合金による水素化反応について以下の検討を行った。 1.MmNi_<3.5>Co_<0.7>Al_<0.8>H_<4.2>(Mm=La30,Ce52,Pr5,Nd13wt%の合金)を水素化試薬として,ビフェニルの水素化反応を160℃で行ったところ,還元剤3.5gあたり1mmolのビフェニルを用いた場合,完全水素化生成物であるジシクロヘキシルが,ビフェニルを5.5mmol用いた場合には,部分水素化生成物であるフェニルシクロヘキサンが,それぞれ用いた基質に対して90%以上の収率で生成することを見出した。 2.片方の芳香環にメチル基およびメトキシ基を有するビフェニルの水素化を行ったところ,電子供与基を有する芳香環の反応性が低いことが明らかとなった。この結果から,合金より放出される水素は,求核的に基質を攻撃すると考えられる。 3.重水素を吸蔵させた合金MmNi_<3.5>Co_<0.7>Al_<0.8>D_<3.5>を調製し,ビフェニル類の重水素化を行い,その結果から本水素化反応の機構について検討を行った。回収されたビフェニル中にも重水素が取り込まれていたことから,本水素化反応が水素化-脱水素化の過程を含むことが明らかとなった。また,水素がsyn-1,2付加すると仮定すると生成物分布を説明できることがわかった。 4.また,含窒素芳香族化合物の水素化についても検討を行ったところ,ベンゼン環の水素化よりも高い240℃程度の温度が必要であることが明らかとなった。
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