研究概要 |
本研究の目的は、アセタール系[1,2]-Wittig転位を開発し、これを効率的なC-グリコシル化法へ応用することにある。[1,2]-Wittig転位は潜在的に有用な炭素-炭素結合形成反応であるにもかかわらず、適用範囲が狭くまた収率、立体選択性がともに低いことから合成手法として用いられることがなかった。本研究では、まずこの転位をアセタール系に適用することを検討した。 パントラクトールから調製したベンジルアセタールにTHF中、BuLiを作用させたところ、[1,2]転位生成物が単一のジアステレオマ-として、収率67%で得られた。この結果からアセタール[1,2]-Wittig転位が高立体選択的かつ実用的な炭素-炭素結合形成反応となることが明らかになった。更に、本転位をリボースのβ-O-ベンジルグリコシドに適用した結果、β-C-グリコシドが単一のジアステレオマ-として得られ、C-グリコシド化法として有効であることが明らかとなった。 次に、より高度に官能基化されたC-グリコシドの合成を目的として、Cl位にエチニル基を有するケタール系の転位を検討した。リボース、もしくはグリコースから誘導したエチニルケトースとγ-トリメチルシリルプロパルギルアルコールから転位基質のケタールを調製した。これらの転位は極めて円滑に進行し、転位生成物が収率よくかつ高立体選択的に得られた。すなわち糖質のCl位に2つのアルキル基を高立体選択的に導入することができた。 以上、本研究の結果、アセタール系[1,2]-Wittig転位が優れたC-グリコシル化法となることを明らかにした。また、従来の手法では得難い多官能化された糖誘導体を高立体選択的に合成することに成功した。
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