研究概要 |
本研究では、セルロース誘導体モデルとして化学修飾したオリゴ糖を用いて,核磁気共鳴(NMR)法や蛍光分光法などの分光学的手法と,コンピュータによる分子力場・動力学計算などの分子モデリングを組み合わせることにより,溶液中における分子鎖構造を明らかにすることを目的とし,以下の成果を得た。 1,希薄溶液におけるセルロース誘導体の分子鎖構造 分子鎖にナフチル基を有するセルロース誘導体NPeCの2糖モデルを用いて,分子力場計算を行った。48個の初期コンホメーションを選び出して,エネルギー極小化を行った。計算の結果,分子鎖構造として,通常言われている平面リボン構造の他に,捩れ構造も安定構造として得られた。蛍光測定の結果と併せると,捩れ構造は溶液中にかなりの分率で存在し,近接するナフチル基同士の会合解離が動的に生じていると考えられる。 2,セルロース誘導体の液晶構造と分子鎖構造 ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の水溶液系液晶に無機塩を添加したときのコレステリック液晶構造の変化を検討した。コレステリック螺旋に起因する選択反射波長は,CL<Br<No_3<I<SCNの順に大きくなったが,これは水の構造を破壊するカオトロピックイオン効果の序列と傾向が一致した。更に,等方状態で塩添加による分子鎖構造の変化があるか,^<13>C NMR測定を行い検討した。グルコース環の各炭素の化学シフト値には殆ど変化がないことから,塩添加による液晶構造の変化は,分子鎖構造の変化より水の構造変化の寄与が大きいと考えられる。
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