1.フェニル基上にトリメチルシリル基を有するセルロース トリス(4-トリメチルシリルフェニルカルバメート)(CTSP)をセルロースと対応するイソシアナ-トから合成し、シリカゲルに担持し、キラル固定相とし、その光学分割能を高速液体クロマトグラフィーで評価したところ、高い不斉識別能を有し、様々のラセミ体を分割できることを見いだした。 2.CTSPはクロロホルムなどの極性の低い溶媒に加溶であったので、多糖フェニルカルバメート誘導体としては初めて、重クロロホルム中、NMRを用いて、CTSPが光学異性体と相互作用している様子を直接観察することができた。トランス-スチルベンオキシド、トレガ-塩基、2-ブタノールなど様々の光学異性体をNMRで識別でき、CTSPがキラル固定相としてだけでなく、新規な高分子キラルシフト試薬としても有効であることが明らかになった。また、これまで明らかでなかった、多糖フェニルカルバメート誘導体の不斉識別機構に関しても、幾つかの興味深い知見を得ることができた。 3.NMRで得られた結果をもとに、セルロース トリスフェニルカルバメートとトランス-スチルベンオキシドの各エナンチオマーとの相互作用エネルギーを分子力場計算を駆使したコンピューターシミュレーションで見積ったところ、HPLCの結果を支持する計算結果が得られ、この手法が、多糖誘導体の不斉識別機構を解明するうえで有用であることが明らかになった。
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