本研究において本申請者はマイクロエレクトロニクス用高分子材料として現在では最も重要なポリイミドの自発的面内配向現象を国内外ではじめて見いだした。この現象のメカニズムを解明することはポリイミドの物性を精密に制御するために極めて重要である。そのため先ず面内配向を定量的かつ簡便に測定する方法を考案した。それは二色性色素の傾斜偏光二色吸収および屈折率異方性を結び付けた方法である。ポリイミド鎖の面内配向度に対する化学構造、イミド化時の昇温速度、フィルムの自由度の依存性などを調べた結果以下の様な重要な結果を得た。(1)ポリイミド前駆体であるポリアミド酸(PAA)の段階では面内配向度は小さいが熱イミド化後は面内配向の著しい増加が見られる場合があり、これはPI鎖の直線性が高いほど顕著である。即ち熱イミド化の間に自発的な面内配向が起こっている。しかしながらそれだけではなくポリイミドが如何に密な分子パッキング状態を取りえるかという因子も関係している。(2)イミド化時の昇温速度が遅いほど面内配向を高めるのに有利である。これは自発的面内配向現象はイミド化進行と共に時事刻々と変化していく分子運動性と密接に関連していることを表している。今後はこの現象のドライビングフォースをさらに詳しく調べ、面内配向度とポリイミドの種々の固体物性との相関を調べていこうと考えている。
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