海難事故の原因は、人の行為による要因、船舶の構造・設備等のハード要因、運航形態等のソフト要因、風波等の自然要因が複雑に関係しているとされている。しかしながら、そのメカニズム及び予測手法は、現在も解明されていない。 そこで、本研究は自然要因の影響を重要視し、その影響をある程度予想できる交通輻輳水域における漁船海難を事例としてモデル化を検討した。はじめに、自然条件の厳しい漁港実務者に対する全国アンケートを行い、実務者の意識調査を行った。その結果、重大な海難だけではなく中小規模の海難・軽微事故レベルの漁船海難に検討を加える必要があること、またモデル水域は日本海沿岸の交通輻輳水域が適切であることが明らかになった。 類似の海難研究例は、重大な海難の記録である海難審判裁決録等をデータとしているが、これら海難記録は非常に件数が少なく海難全体のごく一部であり、必ずしも実情を反映しているとは言えない。そこで、データソースは、中小規模の海難の事例として鳥取・島根県内の漁船事故保険記録を調査し、できるかぎり現状を反映した漁船海難構造について検討を加えることができた。 本研究において明らかになった特徴的内容は、ニューラルネットワークを導入して、海難推論モデルの構築を行い、軽微な海難結果の予測手法の開発を行ったことである。すなわち海難要因の内記録から24個の要因を入力データとし出力はそれら要因の複合的な関わりから生じる海難結果12種に設定した。ネットワークの構築は3層モデルを用い中間層の細胞数を変化させて検証を行うことができた。各種海難要因と海難結果の因果関係を検討し、予測する手法として階層型ニューラルネットワークが有効であることが明らかにすることができた。
|