研究概要 |
油-水2相系を利用した液-液抽出法において,粒子の油-水界面への捕収現象あるいは同2相系での粒子の分配現象は,水中での固体-油間の相互作用エネルギーの観点から論ぜられる。本研究では,捕収剤を一切添加しない油-水系を利用し,表面を疎水性化処理していない酸化物粒子およびシリル化剤を用いてメチル化(疎水性化)処理を施したシリカ粒子を対象とし,本方法における微粒子捕収並びに微粒子分配に及ぼす各種相互作用力の影響について界面化学的な検討を行った。 まず,シリカ,酸化チタン,アルミナなどの酸化物微粒子を対象とした液-液抽出試験を行い,あるpH値で回収率の極大点が存在することを確認し,このpHがそれら酸化物のそれぞれの等電点付近のpH域と一致していることを界面動電位解析により確認した。更に,金属塩化物を添加した系についても同様に液-液抽出試験と界面動電位測定を行い,金属イオンが特異吸着して粒子の表面電位を低下させるpH域で微粒子の回収率が増大することを認めた。以上の結果を基に,本方法において特に粒子間の静電的相互作用エネルギーの低下が重要であることを指摘した。 次に,処理条件を種々変化させてメチル化処理を施したシリカ粒子を試料とし,表面およびバルク特性値が既知である各種液体を用いた接触角測定により一連のシリカ粒子の表面エネルギー解析を行い,併せて水-ヘキサンの油-水系におけるそれら粒子の分配実験を行うことにより,微粒子の初期懸濁液油(或いは水)相から水(或いは油)相への移行に伴う固体-油-水3相系の表面自由エネルギー変化ならびにその作用力に基づくいくつかの成分値との相関性について検討した。その結果,粒子-油相互作用の中でも特に酸-塩基相互作用成分値が粒子の2相間の移行現象と密接に関連していることを究明した。
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