研究概要 |
本研究ではパンコムギとの交雑を経て育成されたライコムギ系統を蛍光in situハイブリダイゼーション法によって解析し,Rゲノム染色体とDゲノム染色体との間の転座染色体を検出することを試みた. まず,3D染色体短腕と3R染色体長腕とからなる転座染色体のin situハイブリダイゼーション法による検出を試みた.ライムギ(Secale cereale,Rゲノム)とDゲノムの提供親であるタルホコムギ(Aegilops squarrosa)それぞれの全DNAを抽出し,RあるいはDゲノムいずれかの全DNAをビオチンで標識し,他方の全DNAを無標識のまま約50倍量加えてin situハイブリダイゼーションを行ったところ,転座染色体を明瞭に検出できた.つぎに,染色体対合の分析から転座を持つことはわかっているが,転座点が同定できていないライコムギ系統Bronco 90をin situハイブリダイゼーション法で解析した。タルホコムギの全DNAをビオチン標識しライムギの全DNAを無標識のまま加えてin situハイブリダイゼーションを行ったところ,1対のライムギ染色体の長腕の末端よりの約1/10の部分にシグナルが認められ,この部分がDゲノム由来であることがわかった.しかし,逆の標識を行った場合にはこの転座は検出できなかった.したがって,in situハイブリダイゼーション法は,プローブの標識を適切に行えば,微少な転座でも切断点を正確に同定できることが明らかになった.
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