トルコギキョウは弱光下では花色が減退し品質を著しく損なう。我々の最近の研究により、茎葉部が十分に光を受けないと花弁におけるアントシアニンの生成が低下することが明かとなった。本研究は茎葉部が受けた光による花色発現のメカニズムを解明することを目的とした。 茎葉部の影響としてまず考えられるのは、光合成の影響である。アントシアニン合成の基質はフェニルプロパノイドであるが、さらに、フェニルプロパノイドは糖を基質にして合成される。したがって、光合成による糖の供給が減少すると基質の不足により花弁のアントシアニン合成が抑制される可能性がある。そこで、花柄で切断した着色前(開花前)の花を各種の糖を含む溶液に挿して10000ルクス下で開花させた。その結果、水だけでは花の着色は著しく抑制され、スクロースあるいはグルコースによって着色が促進された。この結果は、光合成による糖の供給がトルコギキョウの花の着色に重要であることを示す。 また、ペチュニアなどでは糖がアントシアニン合成系の遺伝子発現を誘導することが知られている。この点に関しては現在実験中である。これまでにcDNAライブラリーの作製およびと鍵酵素として知られているカルコンシンターゼのクローニングを行った。またフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)ほか2種の遺伝子のクローニングを行っているところである。これらの材料を用いて、遺伝子発現と花色の発現との関係を調査中である。
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