研究概要 |
黄色花シクラメンの成株および試験管内実生にコルヒチン処理を行い,四倍体黄色花シクラメンの育成を試みた.その結果,成株へのコルヒチン処理では倍加個体は得られなかった.一方,in vitroでのコルヒチン処理では、高濃度のコルヒチン添加区および処理期間の長い区ほどin vitroでの外植体の生存率が低くなる傾向が認められたものの、得られた植物体の孔辺細胞の長径と花粉粒径の調査の結果,100mg/lコルヒチン添加の倍地で4日間培養した区から得られた2植物体,および500mg/lで4日間培養した区から得られた2植物体が四倍体であると確認された.これら四倍体黄色花株の花弁は二倍体黄色花培養株より大きく、花弁もやや濃い黄色を呈した.色素量は四倍体株が二倍体株に比べて全量,1gあたりの量ともに高い値を示した.以上のように,コルヒチン処理により育成された量が増大し,花色が濃くなる傾向が認められた.今後さらに倍加のための処理法を改良することが望まれる. 以上のように,えられた倍加株の割合は低い等の欠点はあるものの,in vitroでのコルヒチン処理により,四倍体黄色花シクラメンの育成が可能であることが示された.また,四倍体ではその形質固定が難しく,品種として成立させるためには栄養繁殖系による大量増殖法の確立が必要になると思われる.そこで,シクラメンのマイクロプロパゲーションについても検討した結果,黄色花シクラメンでは,高い増殖効率が期待される不定胚の形成は非常に困難であった.シクラメンでは組織培養による植物体再生能の品種間差異が大きく,多くの不定胚を形成する品種も認められたことから不定胚形成能の黄色花シクラメンへの導入を試みる必要があると考えられる.
|