研究概要 |
芳香族塩素化合物クロロタロニル(2,4,5,6-tetrachloroisophthalonitrile,土壌殺菌剤)の土壌微生物による分解では、グラム陰性桿菌、グラム陽性球菌および糸状菌が分解菌として単離されているが、土壌中で実際に活性を示す主要な菌群が何かは明らかにされていなかった。本研究では、土壌中でのクロロタロニル分解に寄与する土壌微生物群の寄与率を明らかにすることを目的とし、研究を行った。 土壌中でのクロロタロニル分解に対する土壌微生物群(細菌、糸状菌)の寄与率の測定法の確立を行った。グルコース等の糖以外に、アミノ酸、脂質、天然の培地成分(カザミノ酸やブイヨン、酵母エキスなど)の内で最大分解活性を与えたのはNutrient brothと酵母エキスを1:1で混合したものであった。次に、分解活性を仰制する抗生物質として、抗細菌用としてクロラムフェニコール、テトラサイクリン、アンピシリンの混合物、抗糸状菌用としてシクロヘキシミドが適していることを明らかにした。各土壌に対し、添加培地成分濃度および抗生物質濃度を最適化したところ、部分殺菌効果の影響を最小にしてクロロタロニル(初期濃度10mg/kg)分解の寄与率を測定することに成功した。培養時間は6時間で行った。寄与率は、細菌が約4割、糸状菌が6割であった。添加基質の種類により、活性化される土壌微生物群が異なることも明らかとなった。基質誘導法により各種分解菌群のバイオマスを測定することは、抗生物質の土壌中への均一混合の難しさから成功していない。この点が、課題として残された。
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