高等植物のperoxidasesは病傷害に対する自己防衛反応、リグニン・細胞壁の合成などに関する重要な機能をもつと考えられている。すでに、イネ(Oryza sativa L.cv.Nipponbare)苗条より2種類のperoxidase cDNAsを単離し、それらの構造を解析した。Northern解析の結果、これらの遺伝子は根で恒常的に強く発現しているが、地上部では通常発現量が少なく、UV照射、障害処理およびエテフォン処理によりそれらの発現が強く誘導されることが明らかとなった。そこで、これらの発現特性を明らかにするために、まず両cDNAsに対応する遺伝子断片の単離を行った。各cDNAをプローブとして、約30万の組み換えファージからなるイネゲノミックライブラリーをスクリーニングし、それぞれ2個づつ陽性クローンを単離した。制限酵素地図の作成および塩基配列より、各cDNAに対応する2種類のperoxidase遺伝子を同定した。これらはいずれも3イントロン・4エクソンの構造をとっており、イントロンの挿入位置は両者とも同じであった。両遺伝子の翻訳開始点より上流のプロモーター領域に存在する既報のcis-因子の検索を行った結果、ストレス抵抗性に関与する多くの遺伝子で認められるエチレンに応答する因子、5^1-AGCCGCC-3^1、がいずれの遺伝子プロモーター領域にも存在した。このことは、Northern解析の結果と一致し、この因子が実際にここで単離したイネperoxidasesの発現にも働いている可能性を示すだけでなく、これらのperoxidasesがストレス抵抗性に関与する可能性があることを示唆した。さらに解析を進める上でプロモーター領域を削り込み、それらのプロモーターの活性およびストレス応答を調査する予定である。
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