研究概要 |
1.Penicillium purpurogenumのセルラーゼ誘導について,セロビオース(CB)などのセロオリゴ糖から誘導物質であるゲンチオビオース(GB)へ変換を行う酵素の精製とその諸性質を調べる目的で研究を行ったところ,本酵素は菌体内に局在し,CBで誘導されるβ-グルコシダーゼであった.また,分子量56000の単量体であり,至適pHは6.5,pH6.0〜8.0で安定,反応の至適温度は40℃で,35℃以下で安定であり,菌体外のβ-グルコシダーゼとは異なっていた.各種セロオリゴ糖を基質とした場合,グルコースの他にラミナリビオースやGBなどの糖転移産物が見られた.特にGBは長時間反応液中に残存していたことから,菌体内においても本酵素によって誘導物質であるGBが生成し長時間保持されていることが考えられ,誘導において有利に働いていることが示唆された.2.Corticium rolfsiiの生産する生デンプン分解性グルコアミラーゼG2を精製し,アミノ酸内部配列の一部を決定した.RNAの抽出,mRNAの精製を行い,cDNAライブラリーを作製し,コロニーハイブリダイゼーションによってグルコアミラーゼG2のアミノ酸配列に対応する13個の陽性クローンを単離した.最も鎖長の大きい陽性クローンの塩基配列を決定したところ,開始コンドと終始コンドを含む完全長のcDNAクローンであり579残基からなるポリペプチドをコードしていた.その推定アミノ酸配列は,精製酵素より得られた内部アミノ酸配列と完全に一致し,グルコアミラーゼの活性部位および数種類のデンプン分解酵素に存在するデンプン粒吸着部位が認められた.得られたcDNAを酵母発現用シャトルベクターに連結して構築したグルコアミラーゼ発現用プラスミドを導入した形質転換酵母はデンプン分解能を獲得したことから,酵母において発現,分泌されていることが示唆された.
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