(1)rpoS遺伝子の発現はこれまでに、転写、翻訳、翻訳後の蛋白質安定性の少なくとも3段階で制御されていることが知られている。ppGppを欠く大腸菌株(ΔrelA、ΔspoT)においては、菌体内にRpoS蛋白質が蓄積しないことが知られている。その分子機構を調べるため、rpoS遺伝子上流部分にlacZ遺伝子を連結し、転写および翻訳レベルでの融合遺伝子を作製、ラムダファージを利用したベクターを用いて1コピーで染色体上に導入した。その結果、ppGppを欠く株において、rpoS遺伝子の転写活性が90%程度低下していることが明かとなり、少なくともppGppがrpoS遺伝子の転写を正に制御していることが判明した。これはrpoS遺伝子の主要な転写を司るP2プロモーターが、ppGppにより正に制御されるヒスチジン合成系のプロモーターと相同性を示すこととよく一致した。 (2)RpoS遺伝子産物を含むRNAポリメラーゼホロ酵素(Eσ^<38>)のプロモーター認識特異性について、様々な改変プロモーターを用いたin vitroにおける解析を行なった。その結果、Eσ^<38>がとEσ^<70>同様の-10コンセンサス配列を認識することが明らかになった。即ち、TATAATをコンセンサスとするプロモーター配列は、これら2種のホロ酵素により共通に認識される。
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