化石燃料から作られる難分解性の環境汚染問題の解決と木材性農産廃棄物の有効利用を目的として、L.lactisとA.eutrophusを用いてキシロースからL-乳酸を経て生分解性プラスチック素材であるポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を生産する微生物プロセスの開発を行った。特に本年度は、L-乳酸からPHAを生産する培養ステージの効率化について検討した。乳酸濃度が高くなると菌体の増殖が阻害されるため、オンライン乳酸アナライザーを用いて乳酸濃度が3g/lに保たれるように培養系にL-乳酸Na溶液をフィードする流加培養を行ったが、Na^+の蓄積により高い菌体濃度を得ることはできなかった。このため、L-乳酸Na溶液に替えて、培養系のpHを指標にして市販のL-乳酸溶液をフィードする流加培養を行ったが、L-乳酸溶液に含まれるラクチドの蓄積によって菌体増殖は阻害された。ラクチドの影響を解除するため、pHを7.0から8.0に上げ、培養系の制御乳酸濃度を2g/l程度に下げて流加培養を行ったところ、ラクチドの分解が促進され、培養系における蓄積量を抑えることができた。これにより、乾燥菌体重量当たり80%近い含有率にまでPHAを菌体内に蓄積させることができた。また、一定の希釈率で乳酸培地をフィードする連続培養についても検討したところ、希釈率0.2h^<-1>でも安定して培養を行うことができたが、流加培養よりも高い生産性を得ることはできなかった。実際に、キシロース培地でL.lactis IO-1を培養して得たL-乳酸液の上清をフィードした流加培養でも、A.eutrophusは良好に増殖し、PHAを蓄積した。本研究により、L.lactisとA.eutrophusを用いてキシロースから生分解性素材であるPHAを効率よく生産する培養方法を開発できた。
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