上皮細胞成長因子(epidermal growth factor;EGF)は分子内に特徴的な3箇所のジスルフィド結合を持つペプチド性細胞増殖因子であり、細胞の増殖および分化に重要な役割を果たしていることが知られている。EGFの構造特性と生物活性との相関を検討するために、EGFのアミノ末端5残基が切断されたペプチドおよびEGFの様々の部位のアミノ酸置換体を化学合成し、それらに対する生物活性を調べた。その結果、EGFのアミノ末端の5残基はEGFEGF受容体との結合に関与していないことが明らかになった。また、EGFの13位および37位のTyrの芳香環、15位のLeuの疎水性および41位のArgのguanidino基がEGFの生物活性に重要であることが明らかになった。最近、EGFに類似したドメインを有するペプチド性増殖因子としてヘパリン結合性EGF様増殖因子(heparin-binding EGF like growth factor;HB-EGF)が知られている。しかし、HB-EGFのEGF様ドメインの生物学的な役割についてはまだ明らかにされていない。そこで本研究ではHB-EGFのEGF様ドメインに対応するHB-EGF(44-84)をFmoc-strategy用いた固相法によって化学合成し、EGF受容体との結合能力および増殖活性を調べた。その結果、HB-EGFのEGF様ドメイン[HB-EGF(44-84)]はEGF受容体に対してEGFと同等な結合能を示した。さらに、HB-EGF(44-84)はEGFと同等な細胞増殖活性を示した。従って、HB-EGFのEGF様ドメインはEGF受容体との認識および細胞増殖活性の発現に深く関与してことが明らかになった。
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