1.タバコ脂質転移タンパク質(Tob-LTP)遺伝子を組み込んだ大腸菌(JM83株)を用い、Tob-LTPとマルトース結合タンパク質との融合タンパク質を発現させた。発現した融合タンパク質をアフィニティークロマトグラフィーにより精製し、さらに酵素による切断およびFPLCによるゲル濾過などの行程を経て、Tob-LTPを精製した。その結果、培養液1Lより得られる大腸菌菌体から、約1.3mgのTob-LTPを得られた。この発現系により以後の実験に用いるTob-LTPを安定して供給することが可能になった。 2.一次および二次構造解析に用いる^<15>N標識Tob-LTPの発現を試みた。ミニジャーファメンター中でM9合成培地を用いて大腸菌の培養ならびに融合タンパク質の発現を行った。その結果、今回行った培養条件では大腸菌の生育は不良で、また得られた菌体破砕液の電気泳動のタンパク質染色およびウエスタンブロットで融合タンパク質の発現は認められなかった。現在、培地組成等の要因を検討中である。 3.1.に示した発現系より得られたTob-LTPを用いて核磁気共鳴スペクトルの測定を行った。その結果、一次元スペクトルは測定できたものの、高次構造の決定に必須である二次元スペクトル(^1H-^1HCOSY、NOESY)は測定できなかった。これは長時間の測定の際にタンパク質が会合し沈澱を生じることによるものであり、現在、会合を防ぐために加える還元剤の種類および濃度、溶液のpH等を検討中である。
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