研究概要 |
インスリン様成長因子結合タンパク質-1(IGFBP-1)は、その肝臓における転写速度およびmRNA量が食餌タンパク質の質や量の低下に伴って著増しており、体タンパク質の代謝制御において重要な役割をはたしていると考えられている因子である。本研究では、栄養状態の低下に伴ってBP-1遺伝子に生じる転写制御機構の変化を解明することを目的として、同遺伝子5′領域に結合するHNF-1(hepatocyte nuclear factor-1)に注目して解析を行った。HNF-1には同じ塩基配列を認識する2種類のサブタイプ(HNF-1α,β)が存在するため、まずIGFBP-1遺伝子に結合する因子の同定およびその栄養状態の変化に対する応答を調べてみた。タンパク質として12%カゼインを含む餌(C)あるいはタンパク質を含まない餌(PF)で飼育したラット肝臓より得た核タンパク質を用いて、IGFBP-1遺伝子の断片をプローブとしてgel shift assayを行ったところ、shiftするバンドの移動度が両群で異なっていた。さらに、この反応液にHNF-1α,βの抗体を加えたところ、いずれの場合にもHNF-1αの抗体のみが結合する因子と反応した。この現象は、プローブDNAとしてHNF-1の結合配列のオリゴヌクレオチドを用いた場合にも再現された。また、同様の系でDNasel footprintを行ったところ、PFの核タンパク質の方がCよりも7bp広い領域をprotectしていた。以上の結果より、タンパク質栄養状態の変化に応答して肝臓中のHNF-1αに何らかの変化が生じて、これがIGFBP-1遺伝子の転写制御に関与している可能性が強く示された。
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