生体膜を構成する脂質二重層はエネルギー的に安定な構造であり、2つの生体膜が接近しても容易に融合することはない。しかし、細胞内では盛んに膜の融合が生じている。 膜融合をコントロールするタンパク性の分子装置の実体を明らかにするため、分子顆粒膜に存在しているはずの膜融合装置の一部を認識するモノクローナル抗体を調製し検討するアプローチを行なった。 (1)分泌顆粒のサイトソル側に面した膜上に存在するタンパク質群に対するモノクローナル抗体の作成:ラット膵臓から高度に精製されたチモ-ゲン顆粒を希薄なグルタルアルデヒドで固定化したものを第一次抗原として使用した。さらに第二次抗原(ブ-スター)として精製チモ-ゲン顆粒をこわして内容物(消化酵素群)を洗い出し、膜だけを超遠心で精製しなおしたものを使用した。これによって一次、二次両方に共通の抗原(サイトソル側の膜抗原)に対する抗体を特異的に取得した。 (2)モノクローナル抗体のスクリーニング:まず最初に目的とする分泌顆粒のサイトソル側の膜抗原に対する抗体を選びだす。多数のサンプルを処理するため96穴プレートを2セットづつ用意し、一方にチモ-ゲン顆粒膜標品(M)を、他方に顆粒内容物(C)を塗布し、抗体試料を用いて酵素免疫アッセイ(EIA)を行なう。EIAのM/C比から、膜分子特異的抗体を選別した。つぎにウエスタン解析を行ないそれぞれの抗体に反応する抗原の分子サイズを調べた。この結果、約20種の特異抗体を得た。
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