水産資源保全のために北海道の漁業協同組合はきわめて活発な活動を行ってきている。第一は流域における土地開発行為に対する監視活動で、根釧地区の酪農開発では事前協議制の導入に成功している。第二は婦人部による植樹活動、第三は漁協による森林の取得であり、これら活動は面積としては大きくはないが、これまでの流域土地利用に対する異議申し立て、流域保全のPRという点で大きな意義を持つ。 こうした運動を背景に現在、別海町では道事業によって河畔林づくりが進められているが、様々な問題を抱えている。第一は農地法など法制度の問題で、法体系が縦割り行政のなかでつくられているため、地域の総合的な環境整備を行うという視点を欠如しており、法制度の隙間を縫うような形でしか事業ができない。第二は合意形成の困難さである。漁業者は一方的な被害者意識を持っており、また河川汚染の主たる原因とされる酪農家も政策のいわれるままに経営を展開してきただけであり、また草地をつぶして河畔林づくりをするような経済的余裕はない。 流域森林整備を行うにあたっては、まず地域の総合的環境整備の方向性を考え、なるべく多くの人間が主体的に参加できるような問題設定を行うべきである。そのうえで、こうした運動が進められるように自治体が中心となって縦割り行政を横断するような動きをつくるとともに、利害関係者の合意形成を図ることが求められる。さらにこうした下からの環境保全の動きに対して、財政的な裏付けが与えられるようなシステムを構想することが必要である。
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