研究概要 |
1.細胞培養系の確立 イチョウ(Ginkgo biloba)の原植物としての利用価値は高いものの、in vitro培養に関する研究は極めて少ないので、本研究ではまず、イチョウの形態変化をコントロールし、それぞれの細胞培養系の確立をめざした。材料の葉柄、形成層、実生、胚それぞれを、Linsmaier & Skoog無機塩類にオーキシンとサイトカイニンの種類と濃度を変えて添加した培地に移植した。いずれの外植片を用いた場合も、オーキシンとして2,4DまたはNAAと、サイトカイニンとしてBAまたはカイネチンと組み合わせて添加すると、脱分化が容易に起こり、生長盛んなカルスが得られた。またこのカルスは、暗所では白色をしているが、光照射により緑化させることができた。さらに胚由来の白色カルスは、カルス増殖と同じ組成の液体培地に移植するだけで、懸濁培養細胞の誘導が可能であることがわかった。イチョウは脱分化が起こりやすく、得られたカルスも継代培養できることが確かめられた。一方、分化は起こりにくいが、IBA、IAA等のオーキシンのみをホルモンとして添加した培地に胚を移植すると、不定芽、あるいは原基らしきものが発生することが確かめられた。しかし、幼植物体を得るには至らなかった。不定芽の生育や不定根の誘導には、今後さらに検討を有する。 2.抽出成分の分析 近年、特にイチョウの緑葉の薬効に対する関心が高まっている。そこでここでは、1.で得られた様々な培養細胞と原植物の抽出成分の比較を行ってみた。それぞれのアセトン抽出物をUV、GC、HPLCの機器を用いて分析したところ、成分の種類、量比ともに大きな違いが見られた。今後、培養細胞から、緑葉の薬効成分を獲得するためには、さらに成分を絞り込んだ上での詳細な分析が必要である。
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