研究概要 |
トビクサレの被害を受けたスギを実験材料として,1)巨視的な被害の観察,2)樹幹部への人工的なせん孔とカミキリの食害を受けた部分の組織学的比較観察,3)トビクサレによる変色の広がりと心材化との関連,4)トビクサレの変色と生活細胞(組織)との関連を中心に研究を進めた。その結果の概要を述べる。 1.供試丸太の木口面の観察結果を軸方向に連続して展開することでその供試材の年輪界,心辺材の境,変色の広がりなどの3次元的な構築ができた。それによって変色の発生の部分と広がりの範囲が明確になった。 2.トビクサレの要因となっているカミキリの食害による孔道と周囲の木部組織とを中心に観察を行なった結果,孔道の内壁に炭酸カルシウムの結晶が堆積していた。変色の部分は正常部と比較してかなり木部細胞内こうに着色物質が充填していた。また,変色の周縁部にも炭酸カルシウムの結晶が堆積していた。 3.立木の樹幹部へ木工用ドリルを用いてせん孔し,人工心材を発生させ,本研究費で購入の工業用内視鏡を用いて立木状態での孔道の内部観察をおこない,伐木後採取した円板から孔道とその周囲の組織観察を行った。人工せん孔材はカミキリによる場合との比較をした場合,変色の範囲は狭く,孔道の周辺と孔道から心材部にいたる間で変色は広がっていた。色はトビクサレよりも薄い色であった。 4.心材部と変色部とのつながりの部分や辺材に広がる変色の先端部分の細胞形態,細胞壁の状態,細胞内容物などの観察をおこなった。細胞形態や細胞壁の状態はトビクサレ材,正常材に差異がなかった。内容物に関しては人工せん孔材ではとくに脂質が多く観察できた。
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