研究概要 |
1、同調分裂期にある胚細胞を胚から外科的に分離し、2つの胚細胞を電気融合させた場合、殆どの融合胚は1回目の分裂で4つの胚細胞となった。このため2種類のゲノムをあわせ一つの細胞を得るためには一方の細胞の中心粒を取り除く必要があると考えられた。 2、ゲノム構造の変革の材料となる胚細胞の発生学的な特性の検討を行った結果、(1)キンギョの20℃の培養条件下で9回の同調分裂を行い、その後(受精後6時間)非同調的な分裂となった。この時期が中期胞胚期遷移(MBT)と考えられた。均一な同調胚細胞を使うにはMBT以前の胚細胞を材料とするのが最良であることが示唆された。人為的に多くの同調細胞を得るためには、同調期のM期での4μg/mlのアフィディコリンと1μg/mlのサイトカラシンBを含む生理的塩類溶液での処理が適当と考えられた。(2)ゼブラフィッシュで背方化のシグナルとして知られているgoosecoid遺伝子の発現が受精後8時間に確認され、さらに、受精後6、8時間の胚盤を周縁質上で切断し180°水平に回転を行った胚では2軸が形成されるなど、少なくともMBT以降の胚盤の一部の胚細胞は分化の方向性が決定されており、胚細胞の変革には不適である可能性が示唆された。(3)MBT直後の胚盤の下部を外科的に除去し、胚盤の上部のみからなる胞胚は形態的には正常に発生するものの、その始原生殖細胞の数は、対照胚(16-41,平均22.7)に比べ少ない値(0-15,平均4.6)を示した。この結果はMBT直後にあっても将来生殖細胞へ分化する胚細胞が決まっている可能性が強く、特に胚盤の上部に位置する細胞は変革しても生殖細胞に分化する可能性が低いことが示唆された。これらの胚細胞の特性に関する基礎的な結果により、魚類の胚細胞を変革しその変革細胞由来の次世代を得るためには、MBT以前に将来の生殖細胞となる胚細胞を選び出す必要があると考えられた。
|