本年度はブラックバスの味覚器応答について検討した。供試魚を筋弛緩剤によって麻酔後、眼球を摘出し、眼窩を走行する顔面神経口蓋枝(第VII脳神経)を検索した。顔面神経口蓋枝はブラックバスの場合、容易に見いだすことができた。これを中枢側で切断の後、双極の白金電極に乗せて口蓋に分布する味覚器を刺激した際の応答を積分器を介して記録した。刺激物質はすべて人口池水に溶解して用いた。L-型アミノ酸およびATP関連物質についてまず10^<-2>Mの濃度でどのような物質に応答するかを検索した。その結果、ブラックバスは興味あることにアミノ酸の中ではL-アルギニンのみに応答し、調べたほかのアミノ酸には10^<-2>Mで全く応答しなかった。また、L-アルギニンに対する応答閾値は10^<-3>〜10^<-4>Mであった。一般に魚類味覚器のアミノ酸に対する応答プロフィールは魚種によって異なりその食性を反映しているとされるが、アミノ酸に対する味覚器応答が調べられた魚種では、少なくとも10^<-2>Mの濃度では刺激効果の差こそあれ多くのアミノ酸に応答が見られるのが通常である。ブラックバスのように10^<-2>MでL-アルギニンのみに応答するような魚種は今までに報告がない。今後、さらにアミノ酸やその関連物質の種類数を増やして検討する必要があると思われる。一方、ATP関連物質に体してはATP、AMPなどに応答し、応答の強さは、10^<-2>MにおいてL-アルギニンの約158%および138%程度であった。また刺激閾値はいずれも10^<-4>〜10^<-5>Mであった。
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