補体系の中心成分であるC3が活性化されて生じる種々のフラグメントに対するレセプターの同定を、コイの頭腎から採取した白血球を用いロゼット法によって試みた。まず最初に、ロゼット形成試験の至適条件を検討したが、グルタルアルデヒドによって固定したヒツジ赤血球を抗体で感作し、さらに補体を反応させて調製したEACが、指示細胞として有効に利用できることが判明した。 コイ頭腎より得た白血球をパーコール不連続密度勾配遠心法によってリンパ球、単球/マクロファージ、顆粒球の3画分に分画し、各画分についてロゼット形成能を測定した。その結果、単球/マクロファージ画分と顆粒球画分に形成能が認められたが、前者の方がより多くの支持細胞を結合した。また、これらのロゼット形成は、支持細胞をあらかじめ抗コイC3(Fab)で処理しておくと阻害された。以上の結果は、コイの単球/マクロファージには顆粒球よりも多くのC3レセプターを発現していることを示している。さらにこのレセプターの同定を進めるために、ロゼット形成反応をMg-EGTAまたはEDTA存在下に行い、ロゼット形成のMgイオン要求性を調べた。その結果、EDTAは単球/マクロファージおよび顆粒球のロゼット形成を約50%阻害したにすぎなかった。ヒト白血球上には、Mgイオン要求性のiC3bレセプター(CR3)と非要求性のC3bレセプター(CR1)およびC3dレセプター(CR2)の存在が知られているので、今回の実験結果は、下等な脊椎動物であるコイにも哺乳類のCR1〜CR3に相同なC3レセプターが備わっていることを示唆している。現在、上記ロゼット形成の阻害を指標に、コイ単球上のC3レセプターに対するモノクローナル抗体を作成中である。
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