研究概要 |
筆者はこれまでフグ肝臓中におけるフグ毒の存在形態について調べてきた。その過程において無毒肝臓中に既知のTTX類縁物質とは明らかに挙動の異なる成分の存在を認めた。そこで、本研究では有毒種に分類されているものの、毒性を示さなかったシマフグ肝臓中のTTX成分組成を調べ、そこで新たに見い出されたTTX関連物質について検討を加えた。 シマフグ肝臓を試料とし、食品衛生検査指針のフグ毒試験法に従って毒性を調べ、抽出液の一部をTTXアナライザーに付してフグ毒成分の分析を行った。次に、未知TTX関連物質を得るため、シマフグ肝臓に0.05M Tris-酢酸緩衝液(pH8.2)を加えて均質化し、ホモジネートを遠心分離、限外濾過後,Sephadex G-50、Bio-Gel P-4、およびBio-Rex 70カラムクロマトグラフィーで順次精製した。これをアルカリ分解後、TMS誘導体化してGC-MS分析に供した。 その結果、マウス試験により毒性を示さなかったシマフグ肝臓(5MU/g未満)からはTTXなど既知の有毒成分は検出されなかった。未知TTX関連物質は限外濾過Amicon PM-10膜(分画分子量1万)を通過し、Sephadex G-50およびBio-Gel P-4カラムクロマトグラフィーにおいてそれぞれカラム体積付近に溶出され,Bio-Rex 70カラムには吸着されなかった。こうして部分精製された成分をアルカリ分解,TMS誘導体化し、GC-MS分析したところC9塩基の存在が確認された。しかし、マウス(腹腔内投与)に対して毒性は示さず、分子量はHPLC(Diol-60カラム)分析の結果、1100前後と推定された。本成分は塩酸加水分解でもかなり安定で、生体内での変換については今後さらに検討する必要がある。
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