研究概要 |
褐藻由来硫酸化多糖のフコイダンの抗血液凝固機構の解明として,血液凝固の中枢であるトロンビンおよびXa因子の生成過程におけるフコイダンの影響について検討した。すなわち,血漿あるいは精製系を用いて,トロンビンあるいはXa因子直接,あるいはこれらの前駆体に対して,さらにプロトロンビンからトロンビンあるいはX因子からXa因子への活性化機転に対する効果を検討した。また,これらの作用に対してフコイダンの糖鎖構造が関係するかどうかも合わせて検討した。 フコイダンの存在あるいは非存在下で,凝固機構を活性化することによって生成したトロンビンあるいはXa因子量を発色性合成基質を用いて比色定量しこれらのプロテアーゼの生成阻害活性を判定した。フコイダンは内因および外因系凝固機構の活性化におけるトロンビン生成を濃度依存的に阻害した。しかし,内因系凝固機構の阻害効果の方が高かった。一方,Xa因子生成阻害は内因系凝固機構においてのみ見られた。これらの阻害効果はα(1→2)-フコイダンよりもα(1→3)-フコイダンが優れていた。さらに,両凝固機構において共通に活性化されるXa因子によるトロンビン生成反応について調べたところ,フコイダンは濃度依存的にトロンビン生成を阻害した。しかし,α(1→2)-フコイダンとα(1→3)-フコイダンとに明確な違いは認められなかった。 以上の結果から,フコイダンは主にXa因子によるトロンビン生成反応,すなわちプロトロンビンを活性化するプロトロンビナーゼ(Xa因子,V因子,リン脂質およびCa^<2+>の複合体)を阻害することが示唆された。しかし,この阻害にはフコイダンの糖鎖構造は影響していないことが推察された。また,フコイダンは内因系凝固機構でのXa因子の生成を阻害すことも認められた。この阻害作用にはフコイダンの糖鎖構造が影響しており,α(1→2)-フコイダンよりもα(1→3)-フコイダンが効果的であた。
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