研究概要 |
本試験は下痢性貝毒(DSP)による貝類毒化モニタリング調査を行い、ホタテガイの毒性およびDinophysis属渦鞭毛藻を含む海水中の餌粒子の毒性との関係について検討したものである。海水ネットサンプルおよびホタテガイを1994年4月から1995年1月にかけて岩手県大船渡湾清水定点から月1ないし5回の頻度で定期的に採取した。貝およびネットサンプルの毒性をLeeら(1988)の蛍光HPLC法で分析した。ネットサンプルからの一部からはDinophysis属を種別に原則として200cells以上ピックアップし同様に毒性を調べた。その結果以下の諸点が明らかとなった。 同湾産ホタテガイの毒性は6月22日に最高値0.72ug/g中腸腺を示した。ホタテガイの毒性は8月に再度上昇し9月14日に0.32ug/gとなった。毒の主成分はオカダ酸であった。過去に行った予備調査では同湾産ホタテガイの毒性は晩春から初夏にかけて最高値10ないし50ug/g中腸腺を示し8月にはほぼ無毒となっていたこと、および毒の主成分はDTX1であったこととは、本年度は著しく相違する結果となった。ネットサンプル中にはD.acuminataが5月から6月、D.fortiiが6月から8月にかけて認められた。その他、D.rudgei,D.norvegica,D.odiosaおよびD.infundibulusが見られたがこれらは極めて少数のため貝の毒化には影響しないものと考えた。前2種の細胞当たりの毒性には大きな時期的変動が認められた。 Dinophysis属の発生と貝の毒性は必ずしもパラレルに推移しないことが指摘されているが、このことにより説明出来るかも知れない。分析には上述のHPLC法に加え、Udaら(1989)のELISA法を併用した。両法による分析値はほとんどの場合よく一致したが、8月から9月にかけてのネットサンプルならびに分離したDinophysisの分析ではELISA法の結果がHPLC法の結果を大きく上回っており、オカダ酸やDTX1以外のオカダ酸関連物質が主成分として含まれていることが示唆された。
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