本研究の目的は、農協の資産管理活動によって及ぼされる諸効果についての理論構築を行い、その理論を統計分析、実態調査などにより実証することであった。具体的には、(1)農協については、組織、事業、経営の各面における効果を明らかにする、(2)組合員および地域住民については、農協の資産管理活動を利用する場合としない場合の経済的相違などを明らかにする、(3)地域経済については、農地や緑地の確保状況や区画整理状況などから、農協が介入する場合としない場合の社会経済的相違などを明らかにする、といものであった。以上、これらの目的に対する成果について記述する。 まず、農協の資産管理活動によって及ぼされる諸効果についての理論構築を行い、各効果の解析には学際的な研究が必要であることを明らかした。なお、目的(2)、(3)については予備調査を行った結果、関係者からの協力が得られず、当初予定していたアンケート調査などが実施できなかったため、今回の研究は見送った。 (1)については、農協の組織面への効果は数値化が困難なので、特に、事業面、経営面への効果を計測した。第一に、資産管理活動が組合員に及ぼす効果を研究した京都府の農協において、事業面、経営面への効果を計測した。調査農協は平成2年から資産管理活動に取り組み始めたので、農協の事業、経営収支全体に占める効果は小さなものであったが、シミュレーション分析によれば、今後資産管理活動は当該農協の中心的活動になってゆくであろうことを明らかにした。第二に、全国的に見て資産管理活動が活発な静岡県下の農協において、事業面、経営面への効果を計測した。これら実績のある調査農協においては、農協の事業並びに経営収支全体に占める資産管理活動の割合は高く、かつ、経営管理機構においても事業部門間での連携が密であることを明らかにした。
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