青果物市場における産地の市場対応の経済効果を計測するための理論モデルの構築を行った。 基礎理論としては、Lancasterの消費者選択の理論とそれを源流とするマーケティング論の分野で発達してきた質的需要分析の諸理論である。 ただし、理論モデル構築にあたっては、(1)青果物産地の市場対応は、その評価属性が必ずしも明らかでなく、それゆえ、その確定した属性値に基づくヘドニック・アプローチのような方法はとれないこと、(2)市場対応の効果は、主に卸売市場段階で現れ、かつ卸売市場におけるニーズが主にその源泉となっていること、だからといって、(3)卸売市場関係者に対するヒアリングやアンケートを実施しても市場対応の実質的な効果は測定できないこと、しかし、(4)産地別日別の市場取引データは完備されていること、などを考慮すべきことがわかった。 こうした条件を踏まえて、市場対応の経済効果を計測しようとするならば、(1)既知の属性に特定化しない属性空間上に有限パターンの選好分布が存在し、(2)産地の属性空間上での立地は日々変動しない、という仮定の下で、(3)産地別日別取引価格と取引数量のデータから、(4)ロジット分析またはプロビット分析によって推定可能であることが明らかになった。
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