本研究は移行期経済における消費行動の変化に関して、データが整備されておりまた入手可能なポーランドをケースとして分析を加えるものである。供給量の制限もモデルに取り入れた需要関数モデルを使い、家計消費調査データを定量的に分析し、改革以前の中央計画経済体制下における食料消費行動と改革後のその変化をつかむことが本研究の目的であった。 市場経済への移行に取り組んでいる国において観察される一人当たりの食料消費量の低下は、実質価格の低下と実質小売価格の上昇といった経済条件の変化によって説明されうるが、それ以外にも消費を取り巻く諸制度の変革が消費者行動に構造変化をもたらしていることが確認できた。 本研究を進めるにあっては以下の作業を実施した。 1.この分野における最近の内外の研究成果について再サーベイを行い、需要関数モデルを基本とする理論モデルを構築した。また入手可能データに対応した形で推計モデルを考案し、さらに基礎データを使い試行的な推計を行った。 2.ワルシャワ経済大学のコバルスキー助教授を通して中央統計局が収集した家計消費データを勤労・農家・年金生活家計につき、1960年から1993年まで入手した。家計の種類別、所得階層別に支出額、商品単価を入力し、データベースを作成した。 3.分類別に1.で試みられた推計モデルを使い、消費行動の分析を行う。その際には所得・価格変化に対する需要弾力性を計算するほかに、計測パラメーターの変化より構造変化の有無、またその程度を検証した。 この結果市場経済化に伴う制度の改革等非経済的要因も経済的要因と並び消費行動の変化を説明する要因となっていることが分かった。 今後は、よりミクロレベルのデータを用いて各制度の影響についてより詳細な考察を行いこの研究をより深化させていく予定である。さらに同様な分析を他の移行期にある国についても行い国際比較を試みる予定である。
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