粗粒火山灰土(火山放出物未熟土)は多孔質で特異な間隙構造を有する軽石を主体とする土壌である。その一般的な物理性は粗間隙に富み排水性は非常に良好であるが、有効水分領域に対応した保水間隙量が小さく保水性が劣っているために生産性の低い土壌となっている。そこで本研究ではこの粗粒火山灰土に対して保水性、排水性に優れた土壌改良資材であるバ-ク資材を用いた土層改良を行い、主に土壌の間隙構造ならびに試験圃場での水分・熱移動の点から土壌物理性の評価を行った。 対象とした土壌は、駒ヶ岳系の未風化軽石の粗粒火山灰土で、表層で約20%以上、下層では約40%以上が粒径2mm以上のレキによって占められていた。このレキ分の粒子密度は2.50g/cm^3以下であり、また切断面の目視による観察から内部間隙に富む軽石であると判断した。この現状土区の表層土の間隙量は0.52cm^3/cm^3で、圃場容水量以下の吸引圧(-4.9kPa>)に相当する間隙(保水間隙)量は0.29cm^3/cm^3を示し、バ-ク資材を10t/10a、粗粒火山灰土に混層することにより、間隙量、保水間隙量がそれぞれ0.62、0.36cm^3/cm^3と増大し、容量的な変化に伴って保水性の改善が期待された。7月中に観測された無降雨期(8日間)の土壌水分ポテンシャルの変動は、現状土区では-39kPaに急激に低下するのに対して、10t/10a混層区では-9.8kPaまで緩やかに低下していた。また44mm潅水後25時間の表層が保持していた水分量は混層区の方が多く、現状土区では潅水量の18%が残存したのに対して10t/10a混層区では21%であり、バ-ク資材混層により多量かつ長時間にわたって水分を保持するといった物理特性変化(保水性の改善効果)が認められた。またバ-ク資材の混層により10t/10a混層区では顕著な地温の変化は認められなかったが、40t/10a混層区では熱容量の増大に伴って現状土区と比較して1〜2℃高い地温変動を示していた。
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