施設資産あるいは植物工場は生産環境を維持・制御するためには適しているがその反面イニシャルコストが大きいことが欠点である。そこで商品価値が高く、かつ高品質を維持するために生産制御を必要とする植物として野菜よりも花卉が選定されたが、本研究機関の地域ではバラの栽培が盛んであり日本国内第5位のシェアを得ている。そこでバラを栽培対象とすることにした。 研究計画は栽培ノウハウ取得のための地域農家へのアンケート調査と、栽培環境制御のためのパーソナルコンピュータを使用したエキスパートシステムの構築であった。 まず初めに本研究機関付近のバラ栽培農家を視察し、栽培型、生産設備、栽培上の問題などを視察した。これだけでは情報不足であるため、和歌山県下のバラ栽培農家17軒にに対しバラ栽培法アンケートを実施した。このアンケートでは栽培法を温室土耕ベッド栽培、温室ベンチ栽培及び温室ロックウ-ル栽培の3つのグループに分類し、各栽培法について栽培面積、施設詳細、気温、潅水、空気組成、害虫の各管理法及び省エネルギー対策やマイコンを利用した自動制御技術の導入の度合いあるいは生産主力品種やその色などを調査した。これらの調査の結果土耕栽培農家よりもロックウ-ル栽培農家の方が多く、設備もかなり充実していることがわかった。しかし、気温、潅水、害虫などの管理は実際農家がバラの生育状況を観察することにより適宜行っており、この部分については自動化が遅れていることがわかった。即ちバラの生育状態の観察とその判断の自動化が行われておらず、実用化されていないということがわかった。 第2の研究計画であるエキスパートシステムの構築であるが、実際バラの生育状態の判断を数量化する技術が確立していないのでこの手法について検討中である。なお当面はバラの品質を自動計測し、判断するシステムの構築について対応策を考究している。
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