研究概要 |
抗ネブリンlgGをリガンドとしたアフィニティーカラムクロマトグラフィーにより筋原線維から遊離した5種類のネブリンサブフラグメントを従来法により分離・精製した。これにアセトンパウダーから調製したF-アクチンと結合させた複合体を調製し、0.1mM Ca2を含む溶液で処理すると、いずれのサブフラグメントもF-アクチンから解離し、上澄液に遊離することが分かった。また対照として、5mM EGTAを含む溶液で処理した場合には、サブフラグメントの解離は全く観察されなかった。更に、ネブリンサブフラグメントのF-アクチンからの解離のCa^<2+>濃度依存性を調べたところ、0.1mM Ca^<2+>で解離が最大に誘起される顕著なCa^<2+>濃度依存性を示した。このことは、F-アクチンとネブリンサブフラグメントとの結合はCa^<2+>の特異的な作用により解離することを示している。食肉の熟成に伴い、Ca^<2+>が筋小胞体から漏出し、サイトゾルのCa^<2+>濃度が約0.2mMに上昇することが知られている。この濃度は生筋の弛緩時の場合の約2,000倍に相当する。従って、食肉の熟成に伴い、多量のCa^<2+>がネブリンフィラメントに結合すると、断片化したネブリンフィラメントが細いフィラメントから解離し、サブフラグメントが遊離することが直接的に証明されたと共に、本研究の2つ目の研究計画(ネブリンサブフラグメントのF-アクチンからの遊離)が遂行された。これらの研究成果を日本畜産学会大会で発表した。また。1つ目の研究計画(ネブリンフィラメントの断片化機構の解明)は現在遂行中であり、200kDaおよび180kDaのサブフラグメントのC末端およびN末端の各々10残基のアミノ酸配列を決定し、200kDaおよび180kDaのサブフラグメントの接合部領域のペプチドを合成している最中である。今後この合成ペプチドを0.1mM Ca^<2+>で処理し2つのペプチドに分割することを確認したい。
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