研究概要 |
好中球の殺菌機構において,細菌の貧食に際しての接触刺激によって生成されるスーパーオキシド(O2-)が重要な役割を演じていると考えられている.好中球のO2-産生機能の低下は、感染防護機構の点から重要であると考えられている。家畜においては、特にその新生期においては、肺炎や下痢などの感染症が頻発し、この様な好中球を中心とする非特異性免疫能の低下が類推される。本研究では、まず人と牛の好中球機能の比較をおこない、さらに子牛の好中球機能のなかでO2-の生成能を成牛と比較することで,その機構を明らかにすることを目的とした。この目的のために細胞内の伝達系であるC-Kinase(PKC)を刺激するphorbol 12-myristate 13-acetate(PMA)で好中球を刺激した際のO2-産生能について検討した。まず、人と成牛の比較においてオプソニン化ザイモザンによるC3b受容体刺激とホルボールエステルによる細胞内PKC刺激に伴うスーパーオキサイド生成能の比較から、牛では人と比較してC3受容体に対する反応性が低下していることが明らかとなった。またヒト好中球の走化性因子で活性酸素生成を増加させるFMLPで牛の好中球を刺激しても、全く活性酸素の生成を示さないことから、牛好中球にはFMLPの受容体が存在しないことが示唆された。さらに成牛と新生子牛の好中球の比較において、生後3時間以内に採取した子牛の好中球では、オプソニン化ザイモザンあるいはPMAで刺激するとO2-生成能を示したが,成牛の好中球のO2-生成能に比較して著しく低下していることが明らかとなった。生後3日後での以前低値を示し、生後2週間程度で生牛の半分から約2/3まで回復することが明らかとなった。以上のPMA刺激の結果は、細胞内伝達系のC-キナーゼ以後の経路の活性が,子牛の好中球では成牛と比較してその機能が低下していることが考えられる。NADPHオキシダーゼのレベルでの低下が原因なのかどうかを確かめるため、酵素の主要な構成成分であるチトクロームb-558の吸光スペクトルを測定し比較したところ、成牛と子牛とのあいがに量的変化は見られなかった。燐酸化のレベルか現在検討中である。
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