研究概要 |
肝臓は腸管より吸収された栄養物を代謝すると共にストレスや局部の炎症などに応答して糖の放出を行なう。糖放出メカニズムとして古典的なホルモンに加え、肝マクロファージ(Mφ)であるKupffer細胞から肝実質細胞への情報伝達系が存在する。肝臓灌流系を用いてKupffer細胞を介する糖放出メカニズムを探ったところ、貪食刺激は肝臓からのプロスタグランジン(PG)類の放出を増大させ、このうちPGD_2,PGF_<2α>が糖放出に関与した。ホルボールエステル(PMA)によるKupffer細胞の活性化は貪食による糖放出パターンを変化させた。これはトロンボキサン(TxA_2)の産生経路が活性化された為であり、TxA_2によるグリコーゲン分解は肝実質細胞への直接刺激ではなく、血管収縮による局部的な酸素欠乏(Anoxia)により引き起こされると考えられた。マンナンはMΦ細胞膜上のマンノース・グルコサミン受容体を介してロイコトリエン(LT)を産生させた。LTによる糖放出はTx同様に局部的な酸素欠乏が引き起こすと考えられた。PMAによるKupffer細胞の活性化はマンナンによるグリコーゲン分解を消失させた。この結果はマンノース・グルコサミン受容体のhomologousな脱感作にProtein kinase Cが関与することを示唆した。PAFによる糖放出にはPG,TxおよびLTが関与することが明らかとなった。また、PAFによるグリコーゲン分解はPMAによって消失せず、糖放出パターンが変化した。この結果は、貪食による糖放出と同様にTx産生経路が活性化された為であった。
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