ウマヘルペスウイルス1型の病原性に関与する遺伝子の解明を目的として、ウイルスDNA全体をカバーするDNA断片を混合して感染性ウイルスの再構築を試み、以下の成績を得た。 1.強毒HH1株とこの株を弱毒化したBK343株のウイルスDNAの約40kbの部分消化断片をコスミドベクターpWE-15にクローニングし、それぞれのウイルスDNAを5種のDNA断片でカバーできるウイルス再構築ライブラリーを得た。クローン化した断片を通常の制限酵素切断で完全長のまま得るのは、断片内に切断点があるため不可能であった。そこで、クローン化したDNA内に切断点を持たないPacIあるいはPmeIで抽出できるよう、これらの酵素に対応するリンカーをクローン化したDNAに付加してpWE-15に再クローニングした。クローニングしたDNAはPacIあるいはPmeIで切断後、塩化セシウム密度勾配遠心により精製した。 2.培養細胞へのDNA導入効率をリン酸カルシウム法、リポゾーム法およびエレクトロポレーション法を用いて検討した。培養細胞はウマ皮膚株化(E.Derm)細胞を用いた。これらの方法の細胞毒性を調べたところ、リン酸カルシウム法およびリポゾーム法はE.Derm細胞に対して著しい毒性を示した。エレクトロポレーションではBTX社のManipulator 600を用いて種々の電圧条件で調べたところ、100vの電圧下で約60%の細胞が生存し、これを超えると急激に細胞が死滅した。100vの電圧下で、βガラクトシダーゼを発現するpCH110プラスミドを導入したところ高い発現がみられた。同様の条件でHH1株およびBK343株の精製した5種のDNA断片をそれぞれ混合して導入したところ、再構築ウイルスが得られた。現在、強毒株のDNA断片を弱毒株のものと置き換えた変異ウイルスの再構築を試みている。
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