研究概要 |
パニングによるボツリヌス神経毒素の標的細胞上のアクセプター分子の単離するために、1.毒素分子上の結合領域の大腸菌による発現、2.パニングによるアクセプター分子の単離の二段階で行うことにした。 1.毒素分子上の結合領域の大腸菌による発現 C1型毒素とD型毒素は結合する標的細胞上のアクセプター分子は異なると考えられ、その毒素分子結合領域は毒素分子上のC末端側に存在すると考えられている。毒素分子上の結合領域の位置を正確に把握すると共にその部分をクリアカットに単離するために、C1型およびD型毒素遺伝子を単離し、大腸菌で発現する試みを行った。C1型毒素遺伝子をC型6813株からPCRによって、八つの断片として単離し、全核酸配列を決定した。コードされるC1型毒素は1280個のアミノ酸で構成され、分子量147,814であった。また、D型毒素遺伝子をD型サウスアフリカ株の毒素伝達ファージのゲノムDNAから、プラスミドベクターを用いてクローニングした。そこにコードされるD型毒素は既に発表されているC型ストックホルム株とD型1873株の毒素とから構成されるキメラ毒素であることがわかった。結合領域はC末端に存在し、しかもC1型毒素とD型毒素と構造が異なることが予想される。したがって、それら毒素分子の比較分析からC末端380個以内にアクセプター結合領域が存在すると推定した。そのC末端380個と、その中でもさらに相同性低いC末端100個の領域をPCRによって増幅し、PLプロモーターによって発現するpTrxFusベクターに組み込み可溶化画分にチオレドキシン融合蛋白質として得た。その発現蛋白質の結合活性を各種神経芽細胞で検査中である。 2.パニングによるアクセプター分子の単離 NG108細胞からmRNAを単離し、それらcDNAを合成しベクターに組み込みCOS細胞で発現ライブラリーを作成した。抗チオレドキシン抗体をプレートに結合させ、発現融合蛋白質をその抗体に結合させ、結合細胞をクローニングしているところである。
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