研究概要 |
上皮小体ホルモン関連タンパク(PTHrP)は悪性腫瘍のみならず、皮膚、胎盤、平滑筋、泌乳期乳腺など正常各組織ににおいてその局在が報告され、PTH様作用以外に胎子期の細胞の分化と増殖を調整しているものと考えられている。本研究では、泌乳期のホルスタイン乳牛の乳腺細胞をコラーゲン・ゲル上で培養し、培養乳腺細胞がPTHrPを産生・分泌するかを明らかにする目的で行われた。乳腺細胞は培養24時間以内にゴラ-ゲン膜上に付着し、4〜6日目にシート状に充満した。培養6日目に2.5mm厚のコラーゲン・ゲルをプレートより剥離したところ、剥離1〜4時間で収縮が明らかとなり、剥離後24時間でその直径は1/3に減じた。組織学的には収縮コラーゲン・ゲル上の上皮細胞は円柱状あるいは立方状を呈していた。免疫組織化学的に乳腺上皮細胞はPTHrP、サイトケラチン、ケラチンの各抗体に強陽性に染まった。PTHrP産生は培養2日目では低値(<0.5ng/ml)であったが培養6〜8日目に最高値(2-4ng/ml)に達し、培養14日目までほぼ一定の値で推移した。培養液中の免疫活性PTHrPと生物活性PTHrPは良く相関していた。PTHrP産生は2.5mm厚の浮遊コラーゲン培養の方が1.0mm厚の固定コラーゲン培養法より高い傾向にあったが有為差は認められなかった。またラクトフェリン産生は高値(500-3,000ng/ml)で、αs1-カゼインは低値(<14-77ng/ml)で推移した。PTHrP産生はプロラクチンにより培養6〜14日まで約50%刺激された。またEGF(10ng/ml)添加によりPTHrP産生は、2日間でほぼ2倍に増加した。今回の研究成績より泌乳期の乳牛由来の初代培養乳腺細胞は、細胞培養下でPTHrPを分泌・産生していることが、またその産生はコラーゲン支持膜の厚さおよび収縮により影響されないが、成長因子や乳汁分泌を促進させるホルモンにより調整されていることが明らかとなった。
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