研究概要 |
植物細胞の脱分化に伴う糖蛋白質糖鎖の発現変動を糖鎖構造面から把握するために,ヒマ種子から2.4-dichlorophenoxyacetic acidによりカルス誘導(脱分化誘導)を開始し,経時的に植物組織を採取した。植物組織から水溶性糖蛋白質を調製後,ヒドラジン分解によりオリゴ糖鎖を遊離させ,N-アセチル化,ピリジルアミノ化により糖鎖を蛍光標識した。得られたオリゴ糖鎖の構造を糖鎖2次元マップ,アセトリシス,エキソグリコシダーゼ消化により決定した。その結果,脱分化前には全糖鎖構造の50%以上を占めていたオリゴマンノース型糖鎖が,脱分化に伴い減少し,キシロース,フコースを含む植物細胞に特徴的な複合型糖鎖が増加した。それら増減を示した構造の内,最も顕著に減少したオリゴマンノース型構造はMan_6GlcNAc_2であり,増加した複合型構造は,GlcNAc_<1-2>Man_3Fuc_1Xyl_1GlcNAc_2であった。この結果は,植物細胞の脱分化に伴うプロセシングマンノシダーゼの活性及びGlcNAc,Xyl,Fuc転移酵素の活性昂進を示唆するものであった。植物細胞脱分化に伴うオリゴマンノース型糖鎖の減少と複合型糖鎖の増加が,細胞種間を問わず普遍的に起こる現象であるか否かを確認するために,エンドウ,ニンジン細胞を使用して糖蛋白質糖鎖の構造変化の追跡実験を開始した。まず,脱分化前の貯蔵糖蛋白質糖鎖の構造解析を行った結果,エンドウ,ニンジンともに貯蔵糖蛋白質糖鎖には,オリゴマンノース型糖鎖(Man_<5-8>GlcNAc_2)とキシロース,フコース含有型の複合型糖鎖(GlcNAc_<0-2>Man_3Fuc_1Xyl_1GlcNAc_2)がほぼ等量存在することが明らかとなった。現在,カルス化した組織から得た糖蛋白質糖鎖の構造解析を行っている。
|