研究概要 |
走査電子顕微鏡と原子間力顕微鏡を用いて,コラーゲン細線維の微細構造解析を行った.材料にはマウスおよびラットの種々の部位の結合組織を用いた.走査電顕でコラーゲン細線維を観察する場合は,導電染色と薄い金属コーティングが欠かせなかった.一方,原子間力顕微鏡による観察では,特別な処理をすることなく乾燥させた標本を,コーティングもせずに直接観察することができた. 走査電子顕微鏡で見たコラーゲン細線維は60-65nm周期(D周期)の浅い凹凸をもっていた.この凹凸は原子間力顕微鏡でも容易に観察することができた.とくに,原子間力顕微鏡像では,得られた像をもとに,コンピューター上で溝の高さや幅を正確に測定することができる利点をもっていた.これらの結果によると,どちらの像においても尾腱のコラーゲン細線維の周期は長く,皮下組織などの細線維の周期は短い傾向にあった.また,D周期に伴う線維表面の凹凸の形態も,線維によって異なっているように見えた. 尿素・希酢酸でコラーゲン細線維を処理をして走査電子顕微鏡で観察したところ,腱および皮下組織のコラーゲン細線維が部分的にほぐれて,線維内のフィラメント構造がかなりはっきりと観察できるようになった.このフィラメント構造は,細線維内を右巻きにねじれて配列する傾向にあり,そのねじれの程度は,腱よりも皮下のコラーゲン細線維において強かった. 以上の結果から,コラーゲン細細胞を構成するコラーゲン分子は,細線維内で右巻きにねじれて配列しており,その配列様式は腱と皮下のものでは微妙に異なり,それに応じてD周期も多少異なることが示唆された.
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