本研究は、転写因子であるPax-1の脊椎形成過程における役割を明らかにしていくことを目標とする。 マウスPax-1 Paired box部分をブローブとし、ウズラ4日胚cDNAライブラリーより、ウズラPax-1を単離した。単離した1500塩基対よりなるクロンQP1は、353アミノ酸からなるオープンリーディングフレームを有し、Paired box内のアミノ酸配列は、マウス、またはヒトと100%同一であった。全長cDNAを用いたin situハイブリダイゼーションは、QPax-1が、まず傍軸中胚葉が、上皮性体節に分化したとき、その内腹側2/3で発現することを示した。その後、その細胞はスクレロトームへと分化し、Pax-1を発現する細胞は、脊索周辺にperichorolal tubeといわれる構造を形成することが明らかとなった。Pax-1の発現の必要条件を解析するために、未分化の傍軸中胚葉のin vitroでの培養を行った。単独での培養では、分化は上皮性体節の段階で止まり、Pax-1の発現も見られなかったが、脊索との共培養により、Pax-1を発現するスクレロトーム細胞を誘導しえた。このことにより、Pax-1の発現が脊索からのシグナルに依存していることを直接証明した。 Pax-1に対するモノクローナル抗体を作製した。Pax-1ペアドボックスを含まない600塩基対からなる断片を、GST(グルタチオン-トランスフェレース)の発現ベクターに導入し、GSTとの融合タンパクを大腸菌より大量に精製した。この融合タンパクをマウスに免疫し、マウスミエローマ細胞P3U1と細胞融合し、3種類のハイブリドーマを得た。これらは、ウェスタンブロッティングと免疫沈降法を用いてウズラPax-1タンパクを特異的に認識することを明らかにした。現在、この抗体を用いて、Pax-1下流遺伝子の単離を試みている。
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